2003年09月

バンバンバンババンジー

h7ik59sq.JPG アフリカのある部族における成人の儀式。それがバンジージャンプの起源だという。小学生のころに本で読んで知ったが、まさか将来、自らする事になるとは思いもしなかった。
 その日のメインの目的はバンジージャンプ制覇。
 受付で料金を払い、「自ら好きこのんで自己責任でやります」といったような内容の誓約書にサインを求められる。受付をすませると、腰にはくハーネスを渡される。これでロープと身体を固定するのだ。

 僕の前の順番は、七歳くらいの女の子だった。うれしそうにハーネスをつけてもらい、つけおわるのを待つのももどかしそうに、嬉々として階段をかけ登っていく。
 僕も階段を登っていった。見晴らしはどんどん良くなる。すこし緊張する。

 てっぺんまで登ってきて、異変が起きた。

 係員の前まで来ると、その女の子は激しく抵抗したのだ。
 高所への恐怖は、本能的なものだ。こんな所から飛び降りるなんて正気の沙汰ではないし、そもそも何ひとつメリットはない。彼女の判断はいたって正常だ。
 地上にいる母親らしき人が説得したが、柱にしがみついて彼女は泣き叫び続ける。

 なかば呆然とその様子を眺めていると、そのふいを突くように係員は僕に言った。
 「どうぞ先にやっちゃってください。」

 おいおい、ずいぶんと軽く言ってくれるじゃない。ここまでテンションあげてきたけど、今ので心の準備が素にもどっちゃったよ。

 仕方なく係員の前に出ると、柵を閉められる。もう後戻りはできない。

 深呼吸をして腹をきめる。足から飛び降りるのは怖がってそうでいやだから、両手を広げて頭から飛び降りよう。
 (なに、怖いのなんてほんの一瞬だよ)
 それ以上考えると飛べなくなりそうなので、思考を途中で打ち切るように行った。

 身体を棒のようにして前に傾ける。
 ゆっくりと逆さまに倒れていく。
 足が台から離れ、宙に放たれる。

 (しまっったあぁぁぁぁぁぁぁぁ)
 
 激しく後悔した。予想外にすべてはスローモーションだったのだ。

 地上に向って加速していくのがよくわかった。
 地面がぐんぐん迫ってくる。

 と、突然ロープが張りつめる。
 
 「びよ~ん」と、まるで音が聞こえたかのようだった。

 ロープは伸びては縮み、身体は跳ねあがっては落ちた。
 あの緊迫感のあとに、ありえないまぬけさだった。

 スローモーションですよ。
 飛び降りなんてぜったいやめた方がいいですよ。

空をみる

lbyewl6q.JPG

         鳥の翼が回転するかざぐるまをかじりながら。なにをみてるの?

哲学的

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              この頃はじっとカメラを見つめてくれた。

ニーチェ『善悪の彼岸』から

男子の成熟-子供のとき遊戯の際に示したあの真剣味を、ふたたび見出したこと。

Ben Shahn

k8pxd971.JPG     線
  白い紙に一本の線をひく
  それが地平線となり
  天と地にわかれる
  そして木々が育ち
  動物や人が生まれる
  自分が造物主となって
  新しい世界をつくるよろこびは
  限りなく広がる

 以前なにかでこの詩を目にして書き留めておいた。作者の名前も記しておいたが、知らない名前で、そのとき記憶することもなかった。

 それから数年がたって、いろいろと画集をながめていたとき、ベン・シャーンという人の絵がとても気に入った。

 線が魅力的だった。
 なんとなくあの詩を思い出して、どこにメモしたんだっけなとノートやら手帳やらのあちこちを探した。やっと見つけてすぐに読み返してみる。そして作者名を見ると「ベン・シェーン」とある。

 ん?シェーンとシャーン?
 僕の書き間違いか、日本語で表記するときの違いか(昔はゲーテもギヨオテとかだったらしいし)、それともまったくの別人物か…

 こどもの頃の絵を描くよろこびは、単純に、線をひいていくなかで、そこに世界が立ちあがり広がっていくところにあったのだろうなあ。
 このベン・シャーンは「線の画家」との異名があるそうだ。


▲ Summertime 1949 Ben Shahn(1898-1969)
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